これまでを振り返って#17
これまでを振り返ってみようシリーズ第17回目です。
『ハーバードの人生を変える授業』の本の内容を補強したり,各章を関連付けたり,脱線したりしたいと思います。
前回はこちら「これまでを振り返って#01,#02,#03,#04,#05,#06,#07,#08,#09,#10,#11,#12,#13,#14,#15,#16」
今回は,<17.最高の瞬間をつかむ>の「リフレクション」なかで質問に使用した本,アブラハム・H・マスローの『完全なる人間』を取り上げます。
至高経験って何?
![]() |
|
著者は「至高体験」を,
B愛情の経験,親としての経験,神秘的,大洋的,自然的経験,美的認知,創造的瞬間,治療的あるいは知的洞察,オーガズム経験,特定の身体運動の成就などにおけるこれら基本的な認識事態を,単一の記述でもって概括しようと試みるものである。これらの,あるいはこれ以外の最高の幸福と充実の瞬間について,わたくしは「至高体験」と呼ぼうと思う。
と述べています。
B愛情とは,他人の生命のための愛情,求めない愛情,無我の愛情のこと。
至高体験の特徴は?
至高体験の特徴については,訳者があとがきでまとめてくれていまして,主たる14の特徴を挙げてくれています。そのなかから,5つほど挙げたいと思います。
- 至高経験にあっては,認識の対象を完全な一体としてみること
- 認識の対象にすっかり没入してしまうこと
- 対象を人間の目的の見地から見るのではなく,人間とは無関係なものとして,つまりそれ自体独立した存在として見ること
- 至高体験は能動的でなく,受動的な経験であること
- 人の行動はすべて愛し,ゆるし,受け入れ,賛美し,ある意味で神のような心情を持つようになること
また訳者は,至高体験が人格にどんな影響があるのかについても,13にまとめてくれていて,そのなかから4つ挙げたいと思います。
- 思考経験のある人は,精神の統一(同一性)がみられる
- 過去や未来からも最も自由で,経験に対して開かれている。(中略)今,個々の存在として生きること
- 自分が力の絶頂にいると感じられるので,すべての能力は最善あるいは最高度に発揮されること
- 普通の性質の欲求や衝動を超越して,無欲,無私の立場から行動が自然に発生すること
至高体験を再体験する
何か偉大なるものを目の前にするように,ちょっとした圧倒されることのおそれ(喜ばしいおそれ)を体験したことはありますか?
- 上記の至高体験の特徴を参考にして,過去の体験を思い出して,書き出す。
- 書き出した経験で特殊な感覚(脅威,畏敬,謙遜,敬服など)や考え、感情も含めて,意識を向けながら、もう一度その場にいるかのように想像する。
<17.最高の瞬間をつかむ>の「リフレクション」で提示した質問を使用してもOKです。
マズローの考える「健康な人」
著者は,「動機の状態」という視点から,健康な人々は,基本的欲求(安全,所属,愛情,尊敬,自尊心)を十分に満たしている人としました。
基本的欲求が満たされていない人は,基本的欲求を満たそうとする動機,「欠乏動機」により,それを満たそうとします。しかし,健康な人びとは,自己実現への傾向により動機づけられる,「成長動機」をもつとしています。
その成長動機の1つに至高経験があります。この至高経験が教えてくれることは,『ハーバードの人生を変える授業』の著者であるタル・ベン=シャハーが<17.最高の瞬間をつかむ>でも述べているように,
- 長続きはしないが,長期にわたる影響
- 自分が何者で,これから何をしようとしているのかという洞察
- 将来の困難を切り抜けるための勇気と自信
- いままでは決してしようとも思っていなかったことをするきっかけ
- より幸せになれるだけでなく,失敗から立ち直りやすくもなる
が得られるとしています。
至高経験とまでは言わなくても,うまくいっているときを思い出す方が,足踏みせずに次に進めるのではないでしょうか?
ここでの登場人物
- アブラハム・マズロー
- タル・ベン=シャハー