これまでを振り返って#04
これまでを振り返ってみようシリーズ第4回目です。
「ハーバードの人生を変える授業」の本の内容を補強したり,各章を関連付けたり,脱線したりしたいと思います。
今回は,<04.仕事への考え方を変える>の中でおすすめした本,ミハイ・チクセントミハイの「フロー体験入門 楽しみと創造の心理学」を取り上げます。
生活の質を高めるフロー
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<04.仕事への考え方を変える>では,「仕事と遊びの最適体験」という論文を紹介して,仕事と遊びを比較して,どちらが最適体験(フロー体験)を多く感じているのかについて紹介されていました。
この本では,日常的な活動を生産,生活維持,レジャーの3つにわけて,
われわれの人生がどんなものであるかは,仕事に関連した体験,すでに所持しているものを崩壊から守る体験,そして自由な時間に活動するすべての体験の中にあるといえる。人生がどんなものであるかは,人生が繰り広げるこれらの規定条件の中にある。
と述べています。
フロー(フロー体験)とは,活動への完全な没頭状態のこと。意識が体験でいっぱいであること。そして,体験中に感じていること,望むこと,考えていることが調和していること。
運動選手なら,「ゾーンに入った状態」。画家や音楽家は,「美的な恍惚状態」であるという。
フロー活動を生活の中に取り入れる
フローを体験するためには,フロー活動を取り入れることにあるそうです。
フロー活動の特徴は,以下の4つ。
- 明確で自分に合った目標に集中できるようにすること。
- すぐにフィードバックが得られること。
- チャレンジとスキルのバランスが取れていること。
- 注意力が統制されていて,十分に使われていること。
著者は,人生にすばらしいことをもたらすのは,「幸福というよりも,フローに完全に熱中することである」とも述べています。
ただし,フローを体験しているときは幸福ではないそうです。なぜなら,幸福を体験するためには,自分たちの内面の状態に集中しなければならないから。
フローを体験したあとにだけ,何が起きていたのかを振り返ることができ,その体験の素晴らしを感謝できる,つまり回想の中でだけ,幸福になれると述べています。
フローに入るための重要な学習状態
先に,チャレンジとスキルのバランスが取れているときにフローが起こると述べましたが,フローに入る前のポジティブな状態に,「覚醒」と「コントロール」があります。
「覚醒」状態のときには,精神的に集中し,活動的で,没頭している。しかしそれほど力強さを感じず,愉快でもなく,コントロールできていないと感じている状態。チャレンジがスキルよりも高い傾向にあります。
「コントロール」状態のときは,人は幸福で力強く,満足していると感じる。しかし集中と没頭に欠け,自分のしていることが重要だと感じられない状態。スキルがチャレンジよりも高い傾向にあります。
著者は,「理想的な状況では,行うことを何でも楽しんでいる間,人はたえず成長し続けるだろう」と述べています。それと同時に,厳しい指摘もしています。
ふつう,人はフローの領域に移動するには退屈しすぎ,無気力でありすぎている。それでわれわれは,出来合いの包装済みの刺激や他の種類の商業的娯楽で精神をいっぱいにする方を好む。または適切なスキルを発展させられると想像するには,精神的に押しつぶされすぎていると感じるので,麻薬やアルコールのような人口の弛緩剤から生まれる無気力へ落ちていくことの方を好む。最適体験(フロー体験)にたどりつくためには,エネルギーを必要とする。そして非常に多くの場合,最初の努力を発揮することができないか,したくないのである。
(図26-4-1は,P.43を参考にして作成しています。)
日常体験を記録する
毎日どんな行動をしていますか?自分の行動やその時の状態はどうですか?
- 1週間,自分の行動を記録する。
- 2時間に1回,アラームをセットして,記録する。(1日8回)
- どこにいるか
- 何をしているか
- 何を考えているか
- 誰と一緒にいるか
- その瞬間の意識の状態(フロー,コントロール,くつろぎ,退屈,無気力,心配,不安,覚醒)
- どれくらい幸せか
- どれくらい集中しているか
- どれくらい強くモチベーションを感じているか
- どれくらい自尊感情は高いか
自分の人生は,自分のもの
著者は,フロー体験について書くことができるのは,人間の意識に柔軟性があるからだと述べています。さらに続けて,
もしすべてのことが,人間に共通している条件によって決定されているとしたら,人生をすばらしいものにしようとする方法について試案を重ねることは意味がないかもしれない。しかし幸いにも,現実を違ったものにする個人的な独創力と選択のためには十分な余地がある。そして,これを信じる人たちは運命の支配から解き放たれる一番よい機会を持っているのである。
とも述べています。
ここでの登場人物
- ミハイ・チクセントミハイ