これまでを振り返って#14
これまでを振り返ってみようシリーズ第14回目です。
『ハーバードの人生を変える授業』の本の内容を補強したり,各章を関連付けたり,脱線したりしたいと思います。
前回はこちら「これまでを振り返って#01,#02,#03,#04,#05,#06,#07,#08,#09,#10,#11,#12,#13」
今回は,<14.安全圏から出る>で紹介した本,キャロル・ドゥエックの『マインドセット 「やればできる!」の研究』を取り上げます。
マインドセットって何?
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著者は,マインドセットについて,
マインドセットは信念にすぎない。強いパワーを持つ信念だが、結局のところ心の持ちようであり、それを変える力はあなた自身が握っている。
と述べています。また,
自分についての単純な信念━━人生のありとあらゆる部分にまで浸透している。自分の性格だと思っているものの多くが、じつはこの心のあり方(=mindset)の産物なのである。
とも述べています。
2つのマインドセット
本書では,マインドセットを2つに分けて説明をしています。
硬直マインドセット(fixed mindset)
- 自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人。
- 自分が他人からどう評価されるかを気にする。
- 「知能の量は一定で、それを根本的に変える方法はあまりない」という意見に賛成する。
- 努力は欠陥人間のすることだと考える。
しなやかマインドセット(Growth mindset)
- 人間の基本的資質は,努力次第で伸ばすことができるという信念。
- 自分を向上させることに関心を向ける。
- 「知能はいつになってもかなり伸ばせる」という意見に賛成する。
- 天才であっても,何かを成し遂げるためには,汗を流して努力する必要があると思っている。
<14.安全圏から出る>では,知能に関する4つの質問を載せましたが,著者は,人間的資質についても言えると述べていて,下の4つの質問をあげています。
- どのような人間かはすでに決まっており,それを根本的に変える方法はあまりない。
- 現在どのような人間であっても,変えようと思えばかなり変えることができる。
- 物事のやり方は変えることができても,人となりを本当に変えることができない。
- どのような人間かという基本的特性は,変えようと思えば変えることができる。
ここでは,①と③は硬直マインドセットで,②と④はしなやかマインドセットにあたります。
著者は,説明をわかりやすくにするために単純に2つに分けているが,ほとんどの人が両方のマインドセットを併せ持っている。同じ人でも分野ごとにマインドセットが異なる場合もあると述べています。
そして著者自身も,芸術的才能に対してはコチコチ,知能についてはしなやかな考え方をするようだと述べています。
Growth mindsetは,他の本やwebsiteでは「成長マインドセット」と訳されていることもあります。本書では「しなやかマインドセット」と訳されていますので,ここでも,「しなやかマインドセット」を使用します。
しなやかマインドセットを育むには?
マインドセットをしなやかにする方法として,
- 硬直マインドセットに陥っている,知人や友人を思い出してみる。次に,しなやかマインドセットの知人や友人を思い出して,自分にも取り入れることのできる部分はないか考える。
- 過去に,自分が何かを楽しくやっていたときのことを思い出す。
- 失敗をしたときに,自分にネガティブなレッテルを貼ってしまったときのことを思い出す。次に,その失敗をありのままに認めたうえで、自分の知的能力や人間的資質がそれで決まってしまうわけではないことを理解する。それから,その体験から何を学んだか、あるいは学べるか,どうすればそれを成長に結びつけることができるかを考える。
- 困難に打ち勝って何かを学ぶたびに,脳に新たな回路が形成されていく様子を思い描く。
- いつもやりたいと思っていながら、うまくできる自信がなくて、やらずにいたことはないだろうか。それを実行に移してみる。
を挙げています。
著者は他にも,本書の各章の末尾や終章でマインドセットをしなやかにする方法を挙げていますので,参考にしてください。
成長し続ける
毎日,成長するチャンスがあり,大切な人の成長を促すチャンスもあることに気づいていますか? それを行動に移すことができますか?
- 毎朝,次のことを自分に問いかける。
今日は、私にとって、周囲の人にとって、どんな学習と成長のチャンスがあるだろうか? - そしてチャンスを見つけたら、それを実行する計画を立て,実行に移す。
※行動がうまくいった場合は,以下のことを自問する。
逆戻りせずに進歩を続けていくためには、どんなことをする必要があるだろうか?
努力すればなんでも変えられるの?
著者は,「努力次第で自分のすべてを変えられるのでしょうか。変えられる点は何もかも変えようと努力しなければいけないのでしょうか?」という質問に対して,
どれくらい伸ばすことができ,どれほど時間がかかるかについては何も述べていない。また,すべてを変えられると言っているわけでもない。好みや価値観など,なかなか変わらないものもある。
変えられる点を何もかも変えなければ,と思う必要はない。誰にでも,どうしようもない欠点がある。自分の人生や他人の生活に差し障りがなければ,あえて変える必要はない。
硬直したマインドセットは成長や変化の妨げになる。マインドセットをしなやかにすれば変化への道が開けてくる。けれども,どの部分を変えるのが最も有意義かは,自分で判断すべきことだ。
と述べています。
<13.価値ある行動をする>のなかで紹介した本,グレッグ・マキューンの『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』でも,3つの真実を挙げていましたが,「何でもやるではなく,自分が本当にやりたいものは何か?」と問いかけて,それに力を注ぐのがいいのではないかと思います。
ここでの登場人物
- キャロル・ドゥエック
- グレッグ・マキューン