これまでを振り返って#12
これまでを振り返ってみようシリーズ第12回目です。
「ハーバードの人生を変える授業」の本の内容を補強したり,各章を関連付けたり,脱線したりしたいと思います。
前回はこちら「これまでを振り返って#01,#02,#03,#04,#05,#06,#07,#08,#09,#10,#11」
今回は,意思決定の仕方について,イローナ・ボニウェルの「ポジティブ心理学が1冊でわかる本」のなかから,<第10章 選択肢の多い時代を生き抜く>を取り上げます。
2種類の意思決定者
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タル・ベン=シャハーは,著書「ハーバードの人生を変える授業」<12.完璧主義を手放す>のなかで,
完璧主義者は,非合理的で非現実的な成功の基準を設けているため,その基準を達成できず,いつも欲求不満であったり,何かにつけ十分ではないと思ってしまうような不全感に悩まされていると述べています。
また最善主義者は,現実を受けれていて,失敗を楽しむまではできないにしても,自然なこととして受け入れ,心配をあまりせずに活動を楽しむことができていると述べています。
この完璧主義と最善主義の考え方は,何かを選択する(意思決定をする)ときにも関わってくる考え方です。
何かを選択するとき,大きく2つのグループに分けることがでます。1つは,マキシマイザー,もう1つは,サティスファイサーです。
著者は,マキシマイザーとサティスファイサーについて,
「マキシマイザー」とは,最も条件のよいものを手に入れないと気がすまず,考えうる選択肢すべてを検討する人たち。
「サティスファイサー」とは,自分の要求を満たすのに,「ほどよい」もので十分だと考える人たち。
と述べています。
最良のものを選びたいって何か問題があるの?
「選ぶのなら,1番いいものを選びたい。だから,選択肢は多いほうがいい!」と思ってしまうの(こんなことを考えている時点で,マキシマイザーの傾向が強いのがわかりますね…)。
しかし,この選択肢の過多について警鐘を鳴らした方がいます。
アルビン・トフラーは,「未来の衝撃」(徳山二郎訳,実業之日本社,)の本の中で,
利用できる物質や文化の産物の選択肢が増大することと,対処する準備ができているかどうかということは,まったくの別問題である。なぜなら,複雑で難しい選択は,多くの代償を伴うので,人を自由にするというよりも,その逆の結果をもたらす。
と述べています。
また著者も,
選択肢の数が増えるということは,処理しなければならない情報の数が増えることにつながります。(中略)それだけでなく,私たちは生活のテンポが速まったことによって,以前よりも急速に情報を処理する必要に迫られています。
と述べています。ほかにも,
情報量とそのスピードが増すことで,私たちは刺激過多に陥ってしまい,何も考えられなくなり,選んだり,決めたりすることに四苦八苦して,最終的には,購入する際に,複雑な意思決定プロセスを取らなくてはいけなくなり,多様性と個性化の利点は打ち消されてしまうでしょう。
とも述べています。
マキシマイザーになるとどうなるの?
バリー・シュワルツとアンドリュー・ウォードは,最大限によいものを求める代償として,5つを挙げています。
- 後悔
「もし別の選択肢の方がよかったらどうしよう」「この車を買って後悔したらどうしよう」といった不安感。 - 機会費用
最大化を追求することによって失われる,選択肢のコスト。 - 期待の上昇
選択肢が増えるほど,さらによいものを期待。 - 自責
極度の高い期待が,失敗の個人的責任。 - 時間
最大限によいものを求めるために使った消費時間で,他の多くのことに使えた時間。
マキシマイザー対策
選択という圧力から抜け出すために,トフラーは3つの対処法を挙げています。
- 一時的に意思決定を「凍結」する。
- 自分の所有する物品と長期的な関係を維持する。
- 長期的な人間関係,雇用状態,日常の習慣などは,こうした変わることのない,安定した「不変ゾーン」を作る。
また,シュワルツ&ウォードも「Doing Better but Feeling Worse: The Paradox of Choice」のなかで,助言を与えています。
- 最低限度の条件を満たしたものを受け入れ,「ほどよい」もので満足できるように訓練する。
- 期待値を下げる。
- 他者との比較を避け,自分自身の基準を持つ。
- 後悔を減らし,すでに手にしている恩恵に感謝する
- 選択するかどうか自体を選択し,選択したほうがいいのはどのような場合かを学ぶ
- 一度した選択に対しては,心変わりはしないようにする。
- ルールを設定し,制約をかけることで選択肢を減らす。
「選択した瞬間」を振り返る
自分の「選択した瞬間」を覚えていますか?その選択は前向き(目標達成)な選択でしたか?後ろ向き(問題回避)な選択でしたか?
- その日行った選択を書き出す(できれば1週間続ける)。
- その選択は,自分の人生の目的のために役に立ったか考える。
選択の量と釣り合い
著者は,章の最後にも念を押しています。
選択できることについて,あるレベルまでは,私たちの自由は増大します。しかし,それを超えてしまうと,実際には自由は制限されてしまうのです。
また,シュワルツ&ウォードも「Doing Better but Feeling Worse: The Paradox of Choice」のなかで,
選択肢が複数あるのはいいが,それが必ずしも,選択肢は多ければいいということではない。多数の選択肢を持つことの否定的な側面が現れ始めている。
と述べています。
ここでの登場人物
- イローナ・ボニウェル
- タル・ベン=シャハー
- バリー・シュワルツ
- アンドリュー・ウォード