至高体験から自信が生まれる
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自分の人生を振り返って,最高だったと思う経験は何ですか?
心理学者のアブラハム・マズローは,「人間として最高の瞬間であり,人生におけるもっとも幸せな瞬間,恍惚や,歓喜や,至福を味わう体験」のことをピーク・エクスペリエンス(至高経験)と定義しました。
著者は,このような最高の瞬間について,長続きはしないが,この瞬間を体験することで,長期にわたる影響,
自分が何者で,これから何をしようとしているのかという洞察と,将来の困難を切り抜けるための勇気と自信が生まれます。
また,いままでは決してしようとも思っていなかったことをするきっかけも与えてくれます。
より幸せになれるだけでなく,失敗から立ち直りやすくもなります。
と述べています。
今回のワークは,心理学者のチャド・バートンとローラ・キングによる実験がもとになっています。(詳しく知りたい方は,The health benefits of writing about positive experiences: The role of broadened cognitionを参照してください。)
リフレクション
あなたが経験したピーク・エクスペリエンス(至高経験)を1つか2つ,思い出してみてください。
生活の中でもっとピーク・エクスペリエンス(至高経験)を体験するためには,どうしたらいいと思いますか?
- 3日連続で,1日15分間,自分のピーク・エクスペリエンスを欄外の質問に従って書き出す。
- 書き出した体験のうち,1つを選び,イメージする。
当時感じていた感覚、思考、および感情を含めるようにして、可能な限り詳細に体験。 - イメージした体験を,再体験する。
あなたの生涯のうちで,最も素晴らしい経験について考えてほしいのです。おそらく,恋愛にひたっている間や,音楽を聴いていて,あるいは書物や絵画によって突然「感動」を受けたり,偉大な創造の場合に経験する最も幸福であった瞬間,恍惚感の瞬間,有頂天の瞬間について考えてほしいのです。はじめこれらの挙げてください。それから,そのような激しい瞬間に,あなたはどう感ずるか,ほかのときにあなたが感ずるのとは違っているか,あなたはそのとき,何か違った人になるかどうか。
アブラハム・マズロー(著),上田吉一(訳):「完全なる人間 魂のめざすもの 第2版」,誠信書房,1998年09月
おすすめの本
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今回のワークの質問で取り上げた「完全なる人間」をご紹介しようと思いましたが,もう少し初心者向けの本がないかと思い,こちらをご紹介。
第4章で,ピーク・エクスペリエンス(至高経験)について,詳しく取り上げています。マズローは,この至高経験について,
私たちは世界が持つ究極的な価値を経験的に知ることができる。
と述べています。この究極的な価値とは,存在価値のことで,自己実現者が追究する課題のことと等しくなります。
マズローというと,多くの人は欲求階層論(生理的,安全,所属と愛,承認そして自己実現の5つの欲求階層)を思い浮かべると思いますが,上で挙げた自己実現(者)は,欲求階層論のなかの自己実現に当たります。
ピーク・エクスペリエンスに至る条件については,04.仕事への考え方を変えるのおすすめの本で取り上げた,フロー体験がもっとも近い体験ではないでしょうか。
ただし,ピーク・エクスペリエンスにかんする大切なことは,即席な,安易な人格成長ではだめということ。経験そのものを深く体験する経験的理解に結びつけることとしています。