これまでを振り返って#07
これまでを振り返ってみようシリーズ第7回目です。
「ハーバードの人生を変える授業」の本の内容を補強したり,各章を関連付けたり,脱線したりしたいと思います。
前回はこちら「これまでを振り返って#01,#02,#03,#04,#05,#06」
今回は<07.困難から学ぶ>の中でおすすめした本,ジェームズ・W.ペネベーカーの「こころのライティング 書いていやす回復ワークブック」を取り上げます。
過去の困難に向き合う
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なぜ,過去の困難やトラウマに向き合う必要があるのでしょうか?
<07.困難から学ぶ>の中で,タル・ベン=シャハーは,
本当に幸福になるためには,ある種の自己啓発本や精神科の薬が回避しようとするような不快な感情や辛い体験が必要です。
人は困難を克服することで幸福になれるのです。
と述べています。
ジェームズ・ペネベーカーも,
重大な不幸と葛藤をもたらしている過去の経験の根本的な問題に取り組まなければならない。大切なのは,あなたがこころの奥底にある感情と考えをかくことです。
と述べています。
書くことの効果
著者は,書くことの効果を生物学的効果と心理学的効果と行動の変化にわけて説明をしてくれています。
- 免疫系
免疫機能の全般的な増進と関連している。だたし,長期的な健康という点でどういう意味を持つのかはわかっていない。 - 医学的な健康指標
ぜんそく患者の肺機能の向上や関節炎患者の痛みと病状の緩和に関連,AIDS患者の白血球数の増加,転移性がん患者の睡眠障害の軽減に関連。
比較的健康な大人に関する別の研究では,安静時の血圧レベルがやや低下し,過度の飲酒と関連することの多い肝臓の酵素レベルも若干低下する。 - ストレスの生理学的指標
トラウマについて書いたり話したりしている間に,ストレス低下の兆候がすぐに現れることがある。
- 短期的な気分の変化
悲しくなる(正常なことです)。衝撃的な話題について書いた直後は,さらに気分が悪くなることがある。悲しくなって泣き出したりさえする。
ここで必要なことは,書いたあとにしばらく内省する時間を確保する。 - 長期的な気分の変化
取り組む以前よりも幸せを感じ,悲観的ではなくなる。また,うつ症状,反芻思考,漠然とした不安の報告は,こころの動揺について書いたあとの数週間または数か月間は減少する傾向がある。
- 学校や職場での成績向上
作業記憶の容量を増やすため,人生における複雑な問題に対処できるようになる。
これは,ものごとについて(過去のこころの動揺を含めて)悩んでいると,使える作業記憶は少なくなるが,こころのライティングは,作業記憶を解放してくれるから。 - 社会生活への対処
全体的にみると,トラウマ経験を書いた人は,そのあとの数週間,他人とよく話,よく笑い,肯定的な感情と結びついた言葉をより多く使うようになる。
また,怒りを鎮め,より雇用されやすくする。
書き方
著者は,以下の5つの原則にしたがえば,こころのライティングから最大の恩恵を受けることができると述べています。
- 自分の感情を率直に認める
トラウマの前後に生じた否定的な感情だけでなく,肯定的な感情も感じる。 - 筋の通った話を組み立て直す
バラバラになったものを,もう一度寄せ集める。
これを達成するひとつの方法は,起きたことと,それが自分にどのような影響を与えているのかについて,意味ある話を作ることです。 - 視点を変える
トラウマの出来事を徐々に他人の視点から見始めることによって,最も恩恵を受ける。 - 自分の声を見つける
率直にそして正直に,自分の考えを表現する。
ありのままの自分を反映した声を見つけることのできる人が,書くことから最大の恩恵を受ける。 - 手書きもしくはタイプで打つ
手書きの方が遅いので,書いていることについて考える時間がより多くあると思われるが,統計的に有意な差は見つかっていない。
ほとんどの研究者は,あなたが一番書きやすい方法で書くことを勧めるでしょう。
過去の経験を書き出す
現在のあなたを悩ませている過去の出来事は何ですか?
現在のあなたの生活の中で,今書くのに良い時機ですか?
- 1日,20分間,4日間続けて書く
- 数日または,数週間後に見直す
自分のための物語を組み立てる
著者は,こころのライティングについて,以下のことを述べています。
ライティングは,あなたの理解できない出来事について理解を試みる場合にのみ有益なのです。
すでに出来上がっている物語からは,こころのライティングによる恩恵はあまり受けられないようです。もちろん,工夫を加えることで恩恵を得られるかもしれませんが。
ただ,自分の理解できない出来事を,理解しようとするということ,ここでいう物語を組み立てるという考え方は,心理的な成長の考え方に似ているそうです。
また,過去の経験なら何でもいいわけではなく,現在の自分にとって関係のないトラウマは蒸し返さずに,必要なときが来るまでそっと置いておくことがいいと著者は述べています。
ここでの登場人物
- タル・ベン=シャハー
- ジェームズ・ペネベーカー