子どもの健全な発達のために大人がとる行動
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自分の子ども,または甥や姪,親戚の子どもたちに対して,どのように接していますか?
著者は,多くの親たちは,子どもたちにつらい経験や不愉快な経験は避けて,もっといい人生を送ってほしいと願っていると述べています。
同時に,困難から子どもたちを守るということは,短期間にはよくても,結果的には,自信や,失敗から回復する力,人生の意義を知ること,そして対人関係にかんする大切なスキルを身につける機会を,子どもたちから奪っているかもしれないと指摘しています。
健全な発達と成長のためには,子どもたち自らが失敗に対処し,困難な時期を切り抜け,つらい感情を経験することの必要性をあげています。
リフレクション
子供がいるかどうかにかかわらず,次のことを考えてみてください。
自分の子どもや大切に思っているのかの人の子どもに対して,できる限り楽な人生を与えたいと思いますか?
何でも手にすることができるとしたら,子どもがその「贅沢」を味わうために,どんな代償を払わなくてないけないでしょうか?
- ある子どもと自分との関わりについて考える(自分の子どもでも他人の子どもでも構わない)。
- その子の人生に介入する・しないことで,その子の人生がどうなるかを考える。
- ①のことがその子のためになったか,ならなかったかを考える。
- 「子どもたちに自力で困難に挑戦する機会を与える」とはどういうことかを考える。
おすすめの本
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この本の目的の1つは,本のタイトルにもなっている通り,学校の先生や子どもの発達にかかわる専門家といった現場の人から,教育に関する資金や法令の整備などといった計画を立てる計画立案者に実践的なガイドを提供することを目的に書かれた本。また,「それで,結局はどうすればいいのですか?」という質問に答えてくれる本。
もう1つは,粘り強さ,誠実さ,自制心,楽観主義などといった「非認知スキル」を育むためにどんなことが必要かを教えてくれる本でもあります。実際に,研究をしている大学や施設,学校も紹介しています。
この本全体で大切にしていることは,子どもたち一人ひとりの能力や行動に介入する前に,環境を整備するということ。著者は,
「非認知能力は教えることのできるスキルである」と考えるよりも,「非認知能力は子どもを取り巻く環境の産物である」と考えた方がより正確であり,有益でもある。
と述べています。
子どもたちをの成長を阻害するものに,ストレスや心的外傷,ネグレクトなどが挙げられています。そのなかで,一番の問題となる環境要因は,子どもたちが経験する人間関係だと指摘しています。
子どもたちの環境を整備していくために,家庭への介入の難しさを認めながらも,親子関係への介入が,最も見込みの高いアプローチとなっているそうです。子どもたちの心の安全基地をつくり,もっと子どもとのやり取りを増やすこと,安定したアタッチメント(愛着)を育てていくことの大切さをあげています。
子どもの非認知能力を高めることで,認知能力も高まっていく。よりよい環境を作っていくことが,子どもたちの周りにいる私たちの役割なのかもしれません。
この章での登場人物
- ポール・タフ
- ジェームズ・A・ブリューワー